Weekly digest

指導要領の審議まとめ素案・デジタル教科書の検定骨子案・物価高と教育格差の調査 — 2026 年 9 月第 1 週の論点

中教審の特別部会が8月31日、次期学習指導要領の審議まとめ素案を示し、調整授業時数制度は令和10年度から先行実施の方向です。文科省は9月2日、デジタル教科書の検定骨子案で、動画の総量に上限を設けてはどうかと問う形を示しました。

今週の論点

  • 先行実施まで2年、具体の幅はこれから — 次期学習指導要領の審議まとめ素案
  • 上限の枠組みが先で、必要な中身は誰が決めるのか — デジタル教科書の検定骨子案
  • 学校外の教育費を削った理由は食料品と日用品 — 物価高と学びの格差
  • 開かれない会議と傍聴者ゼロの会議 — 教育委員会の現状調査と文科省の通知
学習指導要領 デジタル教科書 教育格差 教育委員会

← ダイジェスト一覧 トップ

先行実施まで2年、具体の幅はこれから — 次期学習指導要領の審議まとめ素案

Referenced article

中央教育審議会の教育課程企画特別部会が8月31日、次期学習指導要領等に向けた審議まとめの素案を示しました。学校の判断で一部教科の授業時数を標準より減らせる「調整授業時数制度」は国への申請を不要とし、上限は「35コマ以下の教科等を除く対象教科等の最大15%程度」としたうえで、具体の幅は引き続き部会で検討するとしています。

全面実施は小学校が令和12年度、中学校が令和13年度の想定ですが、調整授業時数制度は令和10年度から先行実施される予定です。小学校の総合的な学習の時間(素案では「総合的な探究の時間」に改称する方向)に「情報の領域」を付加し、中学校に「情報・技術科」を新設する新教科・領域も、小学校は令和10年度、中学校は令和11年度から段階的に先行実施する方向です。高校は1単位を50分×17コマに細分化し、卒業に必要な単位は半分になった単位で数えて74から148にする案です。

7月の号で扱った標準授業時数そのものの削減を求める提言と並べると、素案は標準総授業時数を現行のまま維持し、内容の精選と調整授業時数制度で「余白」を生み出す方向になっています。学習評価の見直しや、外部試験による必履修科目の免除・振替など、ここで触れていない項目も多く、詳細は文部科学省が公開している素案(4分冊)で確認できます。

素案の語尾は「〜すべきである」「〜が適当である」で、決まったことはまだありません。次回以降の部会で、上限の幅と先行実施の条件がどう固まるかを引き続き注視する必要があります。

上限の枠組みが先で、必要な中身は誰が決めるのか — デジタル教科書の検定骨子案

Referenced article

文部科学省は9月2日、教科書検定の改善に関する方向性の骨子案を教科用図書検定調査審議会の総括部会に示しました。6月に成立した法改正(施行は一部を除き2027年4月1日)を受けた検討です。骨子案は、動画の総量の上限時間を教科の特性を踏まえて定めることとしてはどうか、という問いの形です。根拠には、現行の教科書1点の二次元コード先に合計5時間を超えるような分量の動画を載せている例があることと、再生中は児童生徒が受動的な視聴になることが挙げられています。

同じ日に配られた校長会4団体の資料は、いずれも動画の総量に基準や目安を求めています。一方で全国連合小学校長会は教科の特性に応じた柔軟な対応の余地を残すよう求め、全日本中学校長会は一律の時間数ではなく教科の特性や教育的必要性を踏まえた基準を、全国高等学校長協会は量だけでなく教育的必然性と学習効果を重視した基準を求めています。各部会の意見にも「動画の長さよりも、どのような内容のデジタルコンテンツを掲載するかが重要」という声があります。

動画の上限という枠組みが先に置かれ、誰がどのようなコンテンツをどれだけ必要としているかの把握が追いついていないのではないか、という問いは残ります。同じ日に配られた意向調査(7月の号で扱ったもの)は、教育委員会や学校に紙とデジタルの望ましい割合を教科別に聞いたもので、学校や子どもの側がどの教科でどれだけの動画を必要としているかを問うた資料は添えられていません。

参考資料の工程表では、検定審査の在り方を秋頃までに審議会で取りまとめ、令和10年度に令和12年度使用の小学校教科書を検定する予定です。上限の時間数とその根拠が秋の取りまとめでどう示されるかが、次の焦点です。

学校外の教育費を削った理由は食料品と日用品 — 物価高と学びの格差

Referenced article

物価高で広がる子供の教育格差、低所得世帯への影響浮き彫りに〜CFC「子どもの教育機会に関する実態調査」から

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン(CFC)はこのほど、「子どもの教育機会に関する実態調査」の結果を発表した。物価高騰が続く中、世帯年収によって子供の教育や体験活動に大きな格差が生じている実態が浮き彫りとなった。 […]

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが8月26日、「2026年 子どもの教育機会に関する実態調査」の報告書を公表しました。全国の小学1年生から高校3年生の保護者7,374人を対象にしたインターネット調査で、直近1年間に習い事や旅行などの体験活動に1回も参加していない小学生は、世帯年収300万円未満で24.8%、600万円以上で8.8%です。

物価高で学校外の学習や体験への支出を減らした世帯は、どの学校段階でも年収が低いほど多く、減らした年収300万円未満の世帯の76.5%が理由に「生活必需品(食料品・日用品)の価格が上昇したため」を挙げています。報告書は、既にある教育機会の格差が物価高の長期化でさらに広がることを懸念しています。

物価高が教育格差の拡大に寄与している可能性があるなら、学校外の学びを支える援助も欠かせません。政府は8月5日、軽減税率の対象である飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間1%に引き下げる方針を閣議決定しました。1%相当分の範囲で、所得に連動した給付も行う設計です。関連法案はこれからです。こうした物価高対策が、教育費を削らざるを得なかった低所得世帯に実際に届くかどうかを見ていく必要があります。

開かれない会議と傍聴者ゼロの会議 — 教育委員会の現状調査と文科省の通知

Referenced article

文部科学省が8月31日、「教育委員会の現状に関する調査(令和6年度間)」の結果を公表し、教育行政の適切な運営を求める通知を出しました。首長と教育委員会が協議する総合教育会議を年度内に一度も開かなかった市町村等は14.4%、会議を開いた市町村等のうち教育委員会会議の傍聴者が年間0人だったのは65.2%です。

学校を専門的に支援する指導主事が配置されていない市町村等は22.9%で、人口5千人未満の自治体では66.3%に上ります。通知は総合教育会議の活用、会議の公開や議事録の公表、事前勉強会などによる議論の活発化、近隣自治体との指導主事の共同設置を含む広域連携を求めています。

会議は開かれず、開いても傍聴者はいません。教育委員会の存在意義そのものが問われています。通知が求めているのは活性化ですが、指導主事のいない自治体が2割を超える中で、学校が教育委員会から受けている支援は何か、どのような機関がそもそも要るのかまで含めて議論していく必要があります。

関連リンク(姉妹サイト)