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枠は国が、判断は現場に — 主務教諭・調整授業時数・デジタル教科書 — 2026 年 7 月第 4 週の論点

今週は、文部科学白書と骨太の方針、次期学習指導要領の調整授業時数、デジタル教科書の指針づくりが相次いで動きました。国が枠組みを示す一方で、何をどう実装するかの判断は学校と教育委員会に置かれています。3つの論点で整理しました。

今週の論点

  • 方向は示された、速さは間に合うか — 白書・骨太方針と教員の精神疾患離職
  • 時数の幅は広がる、削る判断は誰がするか — 調整授業時数制度と研究者の提言
  • 子どもの様子に合わせて使う、それを確かめる仕組みを — デジタル教科書の指針づくり
働き方改革 主務教諭 教員のメンタルヘルス 学習指導要領 デジタル教科書

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方向は示された、速さは間に合うか — 白書・骨太方針と教員の精神疾患離職

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文科省は7月24日、令和7年度の文部科学白書を公表しました。教員の働き方改革を特集に据え、昨年の改正給特法を踏まえてなお「改革はここで終わりではありません」と書いています。

その3日前には骨太の方針2026が閣議決定され、「公教育を再生し、教育の質を抜本的に高める」と明記されました。時間外在校等時間は2029年度までに月30時間程度へ縮減し、教職調整額は2030年度までに10%へ引き上げるとしています。

昨年の改正法は学校教育法も改めており、新設された「主務教諭」の規定が今年4月1日に施行されました。教職員間の調整を担う職です。ただし文科省の通知は、置くかどうかを各教育委員会の判断に委ね、「主務教諭のみに業務が集中することのないよう留意」と書き添えています。

一方、7月22日公表の学校教員統計調査(令和7年度中間報告)では、精神疾患を理由に離職した公立小中高の教員が令和6年度に1,319人で、前回調査から369人増えました。

方向と工程が示されたこと自体は前進です。ただ、この数字は令和6年度のもので、期限は2029年度と2030年度です。改革の速さは、消耗の速さに追いついているでしょうか。主務教諭を置くか、置いて業務が一人に集中しないようにできるか。決めるのは各学校と教育委員会です。

時数の幅は広がる、削る判断は誰がするか — 調整授業時数制度と研究者の提言

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東京学芸大学の大森直樹教授らは7月22日に記者会見を開き、「調整授業時数制度」よりも標準授業時数そのものの削減を求めました。研究会の提言は小学校875時間、中学校945時間です。現行は小学校4〜6年生と中学校の各学年がいずれも1,015時間です。

制度設計は途中です。中教審の特別部会が今年1月に示した検討資料は「〜してはどうか」という文体で、上限値も決まっていません。似た仕組みは既にあり、教育課程特例校は約1,900校、授業時数特例校は約180校が指定されています(2025年4月時点)。柔軟さを求めてきたのは現場でもあります。

OECDが2020年にまとめた報告書は、学校や地方に裁量を与えても「何を削り、何を優先するかの指針」がなければ、カリキュラムの過密はむしろ地方レベルで重くなると報告しています。国立教育政策研究所も2022年に、柔軟な運用は負担軽減策とみなされる一方、教員間の協働や連携を要請するため新たな負担増になりうると書いていました。

主務教諭と同じ形です。国が枠を用意し、何をどう減らすかは学校と教育委員会が決めます。中教審の論点整理には「標準授業時数の弾力化と時数精選の関係」と題した補足図が添えられています。弾力化と精選をセットで示せれば負担は軽くなり、枠だけが広がれば判断の重さが増えます。

子どもの様子に合わせて使う、それを確かめる仕組みを — デジタル教科書の指針づくり

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文科省の有識者会議は7月16日、デジタル教科書の発行や採択の指針づくりに向けて専門家からヒアリングを行いました。群馬大学の柴田博仁教授は自身の実験から、文章から答えを探す課題は紙がパソコンより36.5%速く、複数の文書から矛盾を探す課題でも紙が25.5%速く、誤りの検出率は10.7%高かったと報告しました。紙の利点は「見やすさ」ではなく「扱いやすさ」にあるという整理です。デジタルでは速く読める一方、飛ばし読みや読み返しが増え、「わかったつもり」になりやすい傾向も報告されています。

東京家政大学の太田洋教授は、3年間の実証研究事業から、デジタル教科書が学び方の選択肢を広げると述べました。ある英語の授業実践では約90%の生徒が学び方を変えたと答えています。授業実践の報告と統制された実験とでは確かめている中身が違い、どちらかが他方を否定するわけではありません。

日本学校保健会の弓倉整専務理事は健康面の条件を挙げました。「デジタル教科書が健康被害を起こすエビデンスがない」ことは「健康被害を起こさないことが確認された」ことではない、として、眼精疲労や睡眠、近視の進行を、家庭での使用も含めて継続して確かめるよう求めています。デジタルになるのは教科書だけではなく、画面に向かう時間は学校と家庭で二重に積み上がるという指摘です。

進める材料と慎重に構える材料の両方が出ました。どちらが強く出るかは、学年や教科、子どもの状態によって変わります。先週号の意向調査でも、低・中学年ではほぼ紙か紙が多めの形を望む回答が多く、高学年や中学校の英語・実技系では、デジタルを半分程度以上にしたい回答が多く見られる教科もありました。使い分けの判断は現場が担います。ただ、弓倉氏の資料は「注意喚起」から「継続的確認」へと副題を掲げ、「学校でこれだけ多くの配慮事項をどこまで実行できているか」と問うています。判断を現場に任せるのなら、それが回っているかを確かめる役目は指針の側に残ります。

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